第7章 君の為に出来る事
「………駄目…」
昌宏さんの手が俺のシャツに滑り込んで来ると、俺は唇を離し、その腕を掴んだ。
松岡「………翔…」
「………言ったでしょ…俺…愛してる人が居るんだ…」
松岡「………」
「………彼じゃないと駄目…好きなんだよ…」
松岡「………電話に出たやつか?」
「………え?」
松岡「………やっぱり伝言聞いて無かったか…」
深い溜め息を付きながら昌宏さんは俺に触れていた手を引いた。
伝言…?
「どういう…意味?」
松岡「この間夜お前の携帯に電話掛けたんだ。そしたら知らない男が出て『今寝てる』って。電話があった事伝えてくれって言ったんだけど連絡無いから…だから今日逢いに行ったんだ。やっぱり聞いて無いのか」
「………聞いてない…」
俺は困惑してしまった。
雅紀…何で言わなかったの…。
松岡「良い男かそいつ」
昌宏さんが俺を見つめる。
「………うん…」
松岡「………俺よりも?」
「………当たり前でしょ。家族に紹介してくれたんだよ?俺の事包み隠さずに…」
松岡「………そう言われると…心が痛むな」
「昌宏さんの事責めてるんじゃないよ。普通の親なら反対するのが当たり前だと思う。でもね…昌宏さんと雅紀の違いは…怯まなかった。雅紀言ったの『家族に反対されたら俺を選ぶ』って『反対するような家族はいらない』って…」
松岡「………」
「………昌宏さんにも…言って欲しかった…」
松岡「………すまない」
「もう…過去の事だよ。お互いそれで良かったんだよ。俺は雅紀に出逢えた。昌宏さんは…結婚して…子供も出来た。お互い幸せにしてるんだから」
松岡「………」
昌宏さんが黙ってうつ向いた。
「………昌宏さん?」
松岡「………離婚調停中なんだ」
「………は?」
松岡「………離婚する」
「………何…言ってんの…」
松岡「翔。俺と…やり直さないか」
「………は?」
松岡「愛してる…やっぱりお前じゃなきゃ駄目なんだよ俺」
「止めてよ…」
松岡「………愛してる…翔…愛してるんだ…」
「や、やだ…昌宏さん…」
ゆっくりと、昌宏さんが俺をベッドに押し倒した。