第4章 ショウの秘密
ー翔sideー
目が覚めると、いつの間にか敷かれていた布団で眠っていた。
ゆっくりと起き上がり部屋を見渡した。
「………そう、だよね…」
雅紀の居た形跡は無い。
寝てしまった俺に服を着せ、布団に寝かせて…帰ってしまった。
………俺が言ったんだ。
俺が起きるまでに帰れ、と。
彼を…男娼の恋人になんかさせる訳にはいかない。
俺には勿体無い。
彼には…人並みの幸せを味わって欲しい。
彼を…愛してるから。
「っっ…ふっ、う…」
何でだろう。涙が…止まらない。
逢いたい。逢いたくてたまらない。
気付かなかった。
こんなに…好きになってたなんて。
「雅紀…雅紀っっ…」
今だけ…。今だけだから…。
何年振りだろう。
俺は声を上げて泣き続けた。
「雅紀…雅紀…行かないで…」
雅紀「行かないよ?」
「へ?」
反射的に顔を上げると、コンビニの袋を持って入口に立つ雅紀の姿。
これは…夢?幻覚?
「雅紀…?雅紀なの?」
雅紀「雅紀じゃなかったら俺は誰?」
微笑みながら雅紀は俺を見つめていた。
「ま、さきっっ…!」
気が付くと俺は、その愛しい人の腕の中に飛び込んでいった。
雅紀「どうしたの?」
「ぐすっ…起きたら…雅紀…居なくて…俺が帰れって言ったから帰ったんだって…でも…言わなきゃ良かったって…思って…雅紀に逢いたくて…逢いたくて…そしたら帰ってくるんだもん…」
俺は雅紀の腕の中でぼろぼろと涙を流した。
雅紀「………帰ろうと思った…」
顔を上げると真剣な表情で俺を見つめる雅紀が居た。
雅紀「………君がそれを望むならもう逢わないって…でも…帰ろうとしたら…君が俺を呼んだんだ…」
「え…?」
雅紀「『雅紀』って…眠ったまま俺を呼んで…泣いたんだ。それを見て…思った。やっぱり離れられないって。だって君は…俺を愛してるから…でしょ?」
「………」
雅紀「そして俺も…君を愛してるって…そう思ったんだよ」
「………言っちゃ駄目だって…言ったのに…」
雅紀「もう遅い」
優しく微笑みながら、雅紀は俺の頬にキスをする。
雅紀「俺は言ったよ。愛してるって。翔も言って?」
「………愛…してる…愛してます…」
そして俺達は強く、強く抱き合った。