第20章 after one year
「絵里」
絵里「雅紀…痛い…」
「言えって」
絵里「わ…分かったから…離して…」
苦痛に歪んだ絵里の顔で冷静さを取り戻した俺は…絵里から腕を離した。
絵里「………ごめんなさい…」
「………」
絵里「………私…大学の時…貴方以外の人と…」
「気付いてたよ何となく」
絵里「え…」
「それが…翔に関係あるのか?」
絵里「………その人…友達に誘われて娼館に通って…あの人に溺れたの。溺れて溺れて…会社のお金に手つけて…逮捕された」
「………そっか…」
絵里「一度見た事があったから…お店であの人見た時はびっくりした。まさか貴方とくっついてこんなとこに居るなんて…」
「俺が娼館辞めさせたんだよ」
絵里「………あの人は貴方のお金を食い潰す気なのよ!身体でお金稼いでる様な人なのよ!?」
「………絵里。翔が何で男娼やってたか知らないだろ」
絵里「………え?」
「中学の頃から身体売ってたんだ翔は。その時まだ幼かった妹の手術代稼ぐ為に」
絵里「………」
「最初は路上で客引きしてたんだぜ?そして男娼になった。妹を助ける為だ。全部」
絵里「嘘…」
「絵里。絵里は翔の事が憎いのかもしれない。けどな…自分の欲望満たす為に犯罪犯した男と…妹の為に自分の身を削って生きてきた翔と…やってる事…どっちが間違ってる?」
絵里「私…私は…」
「せめて最初に俺に話して欲しかった。そしたらこんな事にならずに済んだ。事情も知らないで影で翔を責めたお前を…俺は許せない。一生な」
絵里「雅紀…!ごめんなさい許して…!私は貴方の事心配で…」
「………出て行け。もう二度と…会いたくない」
泣き崩れる絵里を…俺は何も言わずに見つめていた。