第20章 after one year
「絵里」
絵里「………」
「絵里ってば」
絵里「何よ」
「謝ってるだろ…ごめんて」
絵里「止めてよ。余計惨めになるわ」
ズボンのチャックを上げながらため息を付くとようやく絵里が振り返る。
絵里「好きだったじゃない。私が口でするの。いつもやらされた」
「そう、だったかなぁ…」
絵里「全然勃たないってどういう事よ…!」
「だから言ったじゃん…無理だよって」
絵里「それでも勃つのが生理現象でしょ!」
「いって…」
半泣きの絵里が俺の腕を叩く。
「………無理なんだよ。俺には」
絵里「何が」
「翔以外の人…抱くの…」
絵里「は?」
「馬鹿だろって…情けないって思われてもいい。でもさ…愛してんだよね…今でも…」
絵里「………」
「頭おかしくなる位…好きなんだよ…翔が」
絵里「雅紀…何でそんなに…」
「分かんない。でも好きなんだよ。好きで好きで…愛してる…」
絵里「あの人は貴方を捨てたのよ!?」
「そうは…思えないんだ。何か理由があるって思えて仕方ないんだ。だから…待ちたいんだよ。せめて俺の気が済むまで…」
絵里「あの人にそんな価値なんてない!」
激昂した絵里が立ち上がった。
「絵里…」
絵里「あの人は…男と寝て財産食い潰して捨てる様な人間なのよ!そんなクズみたいな人雅紀には似合わない!!」
「………絵里…」
絵里「いい加減忘れてよ…!」
「………翔が男娼してたの…知ってるのか?」
そう言うと絵里は…慌てて口を閉ざした。
「………何か…言ったのか?」
絵里「べ…別に何も…」
「………言えよ。絵里」
絵里「ま、雅紀…」
俺は高ぶる気持ちを抑えながら…絵里の腕を掴んだ。