第20章 after one year
赤岩さんに送られ、自宅へと辿り着く。
セキュリティの高い高級タワーマンション。
1人で居るには贅沢過ぎるこの空間。
着替えもせずに俺は寝室に入りベッドに横になる。
ここで暮らす様になって1年が経った。
長い長い…1年。
何も言わずに家を出た俺を…きっと彼は許してはくれないだろう。
しかもまた男娼なんてやってるなんて知ったら…。
でも…これでいい。
赤岩さんの隣に居る事が…雅紀達を守る事になるのなら…俺はいくらでも耐えられる。
赤岩さんに連れられ東京に戻って来た俺は…赤岩さんの愛人となった。
そして…高級男娼。
お店勤めではない。
赤岩さんの重要な取り引き相手に…必要な時に差し出される男娼。
俺のお陰で赤岩さんは…大事な取り引きを何度も成功していた。
俺に溺れた客のお陰で赤岩ホールディングスは…どんどん大きくなる。
赤岩さんは俺との約束通り、あの場所に店は建てなかった。
きっとまだあの場所で…あの店は繁盛しているだろう。
それでいい。
雅紀も…俺を忘れて絵里さんと幸せになれる。
俺を…忘れて…。
「っっ…っく…」
自分で決めた道なのに…。
どうして…毎晩涙が出るんだろう。
「いやだ…雅紀…」
忘れて欲しくない…。
俺を愛して…。
雅紀…雅紀…。
その日の夜も…俺は枕を涙で濡らしながら1人で眠りについたのだった。