第19章 押し寄せる過去
『お前に真っ当な仕事なんか似合わんさ』
『お前には男娼が似合ってる』
客の事なんてどうでもいいと思ってた。
毎日舞の事でいっぱいだった。
適当に甘い言葉並べて抱かれてれば…どんどん金をくれる。
気付いたらナンバーワンになっていて…
それでももっとお金が欲しかった。
会社の金に手出すなんて馬鹿だ。
でもそんなの俺の知ったこっちゃない。
………そう…思ってた。
バチが…当たったのかな。
幸せになりたいなんて…思ったから。
長い夢を…見たと思えば…忘れられるだろうか…。
隣で俺を腕に抱いてぐっすりと眠る雅紀の寝顔を見つめる。
何年も見ている光景なのに…この寝顔を見るといつも幸せになれる。
「雅紀…愛してるよ…」
何度も何度も…守ってもらった。
今度は…俺の番。
「雅紀…ありがとね…一生忘れない」
そう呟いて俺はその唇にそっとキスをした。