第19章 押し寄せる過去
トボトボと家まで道のりをゆっくり歩いていく。
店からは10分程の距離なのに凄く遠くに感じた。
『じゃあその家族を守る為に…お前が出来る事は…何だね?』
赤岩さんの言葉が…ずっと脳内に響く。
………雅紀に出逢ってから今まで俺は…彼とその家族に守られて過ごした。
舞の治療費を惜しげもなく出してくれたお義父さんとお義母さん。
舞が今東京の大学に通えてるのも…2人のお陰だ。
反対されても仕方ないこんな俺を…家族として受け入れてくれた。弟の祐輔くんも。
昌宏さんとの事で裏切った俺を…それでも愛してるとプロポーズしてくれた雅紀。
元カノにも堂々と…『奥さんだ』って言ってくれた。
何よりも…自分の命を犠牲にしてまで…父さんから俺を守ろうとしてくれた。
俺は本当に…世界一の幸せ者なんだ。
皆の優しさに甘えてたのかもしれない。
今度は俺が…守らなきゃ。
家族の歴史が染み込んだ大切な宝を…俺のせいで潰してはいけない。
潰させやしない。
俺が守ってみせる。
………雅紀…ごめんなさい。
許して…。
溢れる涙を拭いながら…俺は愛の巣へと辿り着いた。