第19章 押し寄せる過去
「ん、んぅ…や…」
彼の舌が口内で激しく蠢く。
赤岩さんから必死で逃れようとしたけれど…車内ではどうにもならず。
ようやく唇が離れた時には俺は酸欠でぐったりと赤岩さんにもたれる格好になってしまった。
「はぁ…ふぅ…」
赤岩「ショウ。俺の物になれ」
「何言って…」
赤岩「お前の面倒見てやる。贅沢な暮らしをさせてやる」
「………愛人…ですか」
赤岩「そうだ」
「あの娼館に居た時からお断りしていた筈です。それに俺は今…」
赤岩「恋人が居ると言いたいんだろ。あの店の跡継ぎ息子。お前達近所でも有名らしいな」
「………」
赤岩さんの指が…俺の髪の毛に絡む。
赤岩「しかし…どう思うかな。お前のせいで…大事なあの店が潰れたら…」
「赤岩さん…!やっぱり…お店を近くに建てるのはこれが目的!?」
赤岩「ふふっ。どうだかな…。しかし…私達はライバルになるんだ。やるなら…徹底的に潰す」
「………そんな…!止めて!お願い止めて!!あの店は…あの店は大切な家族の場所なんです!!お願い潰さないで…!!」
赤岩「ふふっ…そんなに大事か…あの男が…」
「………大事です。命よりもかけがえのない人です。彼も…彼の家族も…」
赤岩「じゃあその家族を守る為に…お前が出来る事は…何だね?」
「………」
赤岩「暫くはこの地域で他にいい土地があるか見て回る。返事しだいでは…他の土地に変更する事も考えよう。夜は…このホテルに泊まってる」
ポケットから名刺を取り出し、裏にホテルの名前を書いた後、俺の胸ポケットに入れた。
赤岩「お前は私の物だ。10代の頃から目をつけてたんだからな」
そしてまたゆっくりと…赤岩さんの唇が重なってきた。