第19章 押し寄せる過去
「じゃあお先に失礼します」
雅紀「翔気を付けてね」
雅紀父&母「お疲れ様」
「お疲れ様でした」
一足先に仕事を終えた俺は夕飯の準備をする為店を後にした。
赤岩さん…特に何も言わずに新店オープンの挨拶だけして帰って行った。
でもあの顔…俺を見たあの表情は…。
「………早く帰ろ」
俺は急いで自宅へと向かおうと角を曲がった。
曲がった瞬間…俺の足は止まる。
何故ならそこには…あの日よく見ていた黒いポルシェが止まっていたから。
「………」
すると後部座席の窓ガラスがゆっくりと下がった。
赤岩「やぁ。ショウ」
「………赤岩さん…」
赤岩「やっと見つけたよ。会いたかった」
怖い程の笑みを浮かべながら窓から顔を出した。
「………」
赤岩「………何してる。早く乗りなさい」
「………帰らないと…」
赤岩「………乗るんだ」
「………はい」
俺はふらつく足を押さえながら…ゆっくりと後部座席に乗り込んだ。
赤岩「久し振りだな」
「………お久し振りです…」
赤岩「………随分探したよ。まさか千葉に居るなんてな。しかも中華屋で働いてるとは…」
「………」
赤岩「地味になったが…相変わらず美しいなお前は」
ぐいっと顔を持ち上げられる。
赤岩「………お前には随分金を使わせて貰ったな…本当最高だったよお前は。お前が消えてから色々探したけどな…お前以上の男娼は居ない」
「っっ…ぐ…」
顎を掴んでいた手が首に伸び、力が籠っていく。
「や、止めて…」
赤岩「ショウ…」
力が緩まったと同時に…ゆっくりと彼の唇が重なってきた。