第19章 押し寄せる過去
絵里「んー美味しい。やっぱりここのタンメンは日本ーね」
美味しそうにタンメンを食べながら…絵里さんはにっこりと雅紀を見つめた。
雅紀「好きだなぁ相変わらず」
絵里「美味しいんだもん。ごちそう様でした」
完食した器を下げて俺は一旦厨房に下がる。
祐輔「翔兄ちゃん俺がやっとくから」
「でも…」
祐輔「いいって。気になるだろ?大丈夫だから兄ちゃんの側に居て」
「………ありがとう」
俺は祐輔くんに頭を下げてホールへと戻った。
雅紀「え!?離婚したの!?」
雅紀の声が店内に響く。
絵里「そう。もう都会に疲れたわ。少し実家でゆっくりしながらこれからの事考える」
俺は何も言わずに隣のテーブルへと腰掛けた。
気を効かせたのか…お義父さんとお義母さんはテーブルを離れ午後の準備へと取り掛かっていた。
雅紀「ふーん…」
絵里「ねぇ雅紀。久し振りなんだから今度遊びに行かない?10年居ないとここも様変わりしちゃってさー分かんない」
絵里さんの腕が伸び、雅紀の手を絡め取る。
絵里「いいでしょ?」
雅紀「………」
絵里「雅紀」
雅紀「………悪いけど他当たって」
絵里「えー。何でよ」
雅紀「俺結婚してるんだ。だから無理」
絵里さんを見つめながらキッパリと雅紀は言い放った。
「………」
絵里「は!?嘘でしょ」
雅紀「嘘じゃないよ。おいで翔」
雅紀の視線が俺に移り、手招きをする。
「………はい」
立ち上がり、雅紀の隣に立つと雅紀も立ち上がり俺の手を握った。
絵里「………は?」
雅紀「紹介遅れた。うちの奥さん」
「………櫻井…翔…です」
俺は絵里さんに頭を下げた。
絵里「………は。バイト?てか男…」
雅紀「バイトじゃない。俺のお嫁さんとして一緒にここで働いてる。男なんて関係なく…愛し合ってんだ。だから…結婚した」
真顔でキッパリと言う雅紀の横顔を見つめながら…やっぱりこの人に選ばれて良かったと…心から思っていた。