第18章 ハッピーエンドのその後に
ー翔sideー
「全く…困るんだよな…」
厨房の1番奥までやって来ると、ふぅとため息を付く。
「………またか」
ポケットから取り出したそれは…さっきの業者のお兄さんから渡された紙切れ。
最後に握手された時にどさくさ紛れに渡された。
開くとそこにはあの人の番号と名前。
『一目惚れです!今度デートしましょう!
めっちゃ好みです!!』
「はぁ…」
これで何度目だろう。
お客さんに連絡先を渡されたのは。
興味ないのに…。
だって…俺が興味のある人は…雅紀だけだから。
くしゃくしゃと紙切れを丸め、ゴミ箱に捨てようと手を上げた時、その手を後ろから掴まれる。
「え?」
驚いて振り返ると…そこには真顔の雅紀が居た。
「ま、雅紀…」
雅紀「何してんの」
そう言いながら…手の中の紙切れを取り上げられる。
「あ、ちょっ…」
雅紀「『一目惚れです!今度デートしましょう!
めっちゃ好みです!!』ね…」
「あ…」
雅紀「ちょっと後で会社にクレーム入れないとな…。勤務中にナンパするなんて」
「雅紀…」
いつもの口調で話す雅紀。
でもその瞳は…全く笑っていなかった。
「お、落ち着いて…」
雅紀「落ち着いてるよ」
そしてその紙をビリビリに破り、ゴミ箱へと叩き付ける。
「雅紀怖いよ…いつもこんなるから俺…」
雅紀「こっそりゴミ箱に捨てようとした?」
「………だって…」
雅紀「そうやって色気を振り撒く翔も悪い」
「ちょっ…雅紀?」
両手を掴み、壁に押しやられる。
ゆっくりと雅紀の顔が近付いて来た。