第3章 接近
ー雅紀sideー
ショウ「………何か…拍子抜け」
「え?まずかった?」
ショウ「………その逆」
「なら良かった。美味しいでしょここのカフェオレ」
俺は向かいに座るショウさんに向かって微笑んだ。
俺がショウさんを連れて来たのはたまに行くオープンカフェ。
俺はショウさんと一緒にテラスに座ってお薦めのアイスカフェオレを飲んでいた。
ショウ「美味しいけど…」
「なら良かった」
ショウ「てっきりラブホかと思った」
「ぶほっ!」
ストレートなショウさんの言葉に俺は吹きそうになった。
「言ったでしょ。寝る気はないから」
ショウ「………でもあんた俺に気があるでしょ。この間お茶誘ったくせに」
「ま、まぁ…確かに。でもあれは本当にお茶だけで…それ以上の事は考えてなかったから…」
ショウ「ふーん…」
カフェオレを飲みながらショウさんがジッと見つめる。
ショウ「………信じるよ」
にっこりと微笑んだ。
………初めて見る、営業スマイルではないショウさんの素の笑顔。
ショウ「何でさ、あの店に来たの?」
「太一先輩に誘われて…そういうお店って知らずに着いてって…」
ショウ「そうなんだ。じゃあ驚いたでしょ。女じゃなくて…男専門の娼舘なんて」
「………うん…」
ショウ「以外に多いんだよ。ああいう所。女と違って男は妊娠の心配もないし、生理になったりもないからね。それに…男を知ったら女じゃ満足出来なくなる輩も居るからね」
時折周りの景色を眺めながら、ショウさんは淡々と話した。
ショウ「政治家や業界人も沢山来るんだ。以外に多いんだよ、男もイケるって人」
「………そうなんだ。ショウさんは…何で…この仕事やってるの?」
ショウ「………金かな」
「………お金?」
ショウ「そ。金は裏切らないから。それにセックスするだけであんなにお金貰えるんだから…良い仕事だよね」
「………そうなんだ」
この時の俺は…まだ知らなかった。
彼が抱えてる物の大きさを。そして彼の…壮絶な過去を。
この時は…そんな彼を少し見下して話を聞いていたんだった。