第15章 対峙
ー翔sideー
舞と夕食を準備しながら雅紀の帰りを待った。
クリームシチューのいい香りがキッチンに漂う。
シンクに立ったまま…舞は驚いて俺を見つめていた。
舞「………何で…何であいつがここに…」
「分からない…でも…会いに来たのは多分…お金だと思う」
舞「やだ…忘れてたのに…」
怯えた瞳の舞の背中を俺はそっと撫でた。
「大丈夫。俺が居るし…雅紀も居る。この場所まではまだ知らないだろうから…でも舞。暫くはあまり出歩かない方がいい。出来るなら…部活も休んで」
舞「うん」
「………もしあいつに会ったら…何かしようとしたらすぐ逃げろ。人呼ぶんだぞ」
舞「分かってる。でもお兄ちゃんは?」
「雅紀に暫く店は休めって言われたから…お前の事も心配だし家に居るよ。だからもし変な事があったら直ぐに電話しろよ。迎えに行くから」
舞「うん」
その時玄関が開く音がして雅紀が帰って来た。
「雅紀。お帰り」
舞「まー君お帰り」
雅紀「ただいまー。お腹空いた。わぁ、クリームシチュー?」
舞「そうだよ」
雅紀「早く食べたい~」
「先にお風呂入って来て?着替え持って行くから」
雅紀「オッケー」
笑顔の雅紀がバスルームへと向かう。
「舞これお願い」
舞「はぁい」
俺は着替えを持って雅紀を追い掛けた。
「雅紀」
雅紀「あ、ありがとう」
上半身裸の雅紀が笑顔で着替えを受け取る。
「父さん…来た?」
雅紀「………うん。お昼に」
「………やっぱり」
雅紀「でも大丈夫。二度と来るなって強く言っといたから暫く来ないと思うよ」
「………そうなの?」
雅紀「うん。でも念の為に暫く店は休んでね」
「うん」
笑顔で俺の髪を撫でる雅紀の右手が目に入る。
「あれ雅紀…手どうしたの?」
右手の拳が…赤く腫れていた。
雅紀「あ、これ?調理場でぶつけちゃってさ…ドジだよね」
「大丈夫?」
雅紀「平気だよ。翔、俺の裸見たいの?」
下着に手をかけながら雅紀が笑う。
「も、もう馬鹿!」
俺は慌ててバスルームを出た。
雅紀の笑顔に何となく違和感を感じながら…。