第15章 対峙
その人がまた来た時… 全員が立ち上がった。
狙い定めた様に…客の居ない休憩時間を狙って来る。
「待ってましたよ」
翔父「………どうも」
朗らかな表情を浮かべながら頭を下げられる。
「こちらへどうぞ」
1番奥の席へと案内した。
父ちゃんと母ちゃん…祐輔、他の従業員は気を効かせて外に出て行く。
翔父「失礼します。あの…翔は…」
「暫く休ませてます。貴方に会わせない様に」
翔父「そうですか…やっぱりまだ私の事…許してくれないんですね」
「………」
翔父「翔には…酷い事してきたから簡単には許してくれないんでしょうね」
「………どうしてここが分かったんですか」
翔父「それは…まぁ…色々と…」
「目的は何ですか?」
翔父「………」
「お金…ですか?」
すると…顔付きが変わる。
「翔から全部聞いてます。貴方が翔にしてきた事。翔は…貴方が改心してようとしてまいと…一生許さないと言ってます。私は翔の味方です。だから貴方と2人を会わせる訳にはいきません」
翔父「………」
「お金は…少しなら渡せます。うちは見ての通り…普通の中華料理屋。何度もたかられる程の余裕はありませんから一度きりにして下さい」
翔父「ふふっ…あんた話がはえぇな」
「………」
嬉しそうに…この男は微笑みを浮かべた。
翔父「いくらだ?」
「………200万弱なら何とか」
翔父「まぁいいだろ。いつ用意出来る?」
腕を組み、顎を俺の方に向けながら高圧的な態度で話す。
………翔の話してた通り…反省も何もしてない。
何て男だ。
「用意してる」
俺は立ち上がり、レジから封筒を取り出すとテーブルに叩き付ける。
翔父「物分かりのいい奴で助かったよ」
嬉しそうに封筒を取り中身を確認した。
「………」
この5年…コツコツと貯めてきた俺の貯金。
いつか…いつか翔と2人で店を出せたら。
淡い夢を抱きながら誰にも内緒で貯めていたお金…。
きっと…翔にバレたら怒られるだろうな。
でも…惜しくはない。
お金はまた…貯めればいい。
ただひとつ。
俺の夢をこいつに食われた事が許せない。
翔と舞ちゃんの人生を狂わせた事…絶対に許せない。
翔父「ん?」
俺はありったけの力を込め、目の前の男に拳を振り降ろした。