第15章 対峙
ー雅紀sideー
「………」
翔「………」
全てを話し終えた後、翔は大きく息を吐いてお茶を飲んだ。
翔「………雅紀…雅紀?」
「あ、ご、ごめん…」
翔「何か言ってくれないと…困る…」
「ごめん…ちょっと…壮絶過ぎて…」
翔「………黙っててごめん…」
「謝る事ないよ。それで…家出たの?」
俺は姿勢を正し、翔を見つめた。
翔「うん。警察の人と話したら…父さんもうマークされてたみたいで…うちに隠してたコカイン渡して…それで逮捕された」
「………」
翔「その後俺達は…親戚の家にやっかいになって…でも…折が合わなくて。俺が中学卒業してすぐに舞と2人で家出たんだ。でもその後すぐ…病気が発覚して…」
俺は手を伸ばし、翔の手を握り締めた。
翔「お金…どうしたら手に入るかって…考えて…でもまともに働いた事無くて…それで…試しにホテル街歩いてみたら直ぐに客引っ掛かって…それから…売春する様になったんだ。昌宏さんに逢うまで…。それしか出来なくて…」
「………分かった。分かったよ翔」
俺は翔の隣に座り、その身体を強く抱き締めた。
「全ての元凶は…あの人なんだね…」
翔「………うん…」
昼間見た…あの人柄の良さそうな笑顔を思い出す。
よくも…のうのうと来れたな…。
ていうか…よく場所が分かったな…。
翔「………父さんの事は…昌宏さんも知らない。雅紀には…いつか言うつもりだった…。結婚…したんだから…でもなかなか踏ん切りつかなくて…」
「気にしないで。言うのには…俺じゃ想像出来ない位勇気がいる事だと思うよ。話してくれてありがと」
翔「雅紀に逢って…雅紀の家族見て…『家族』ってこんなものなんだって思った。こんなに温かいものなんだって…本当に今俺は…幸せなんだよ。あんな奴に幸せ崩されたくない」
「崩させやしない」
翔の肩を抱き、不安を宿したその瞳を真っ直ぐに見つめる。
「翔と舞ちゃんは俺が守る。約束する。あの人が…何の目的で来たのかは分からないけど…絶対に守るから。だから…安心してここに居て?」
翔「………うん」
絶対に…翔を、舞ちゃんを守る。
俺の命を懸けても…。
心に誓いながら俺はいつまでも翔を抱き締めた。