第11章 別離
マンションに着くと…まだ雅紀は来て居なかった。
俺は待つ間キッチンでお湯を沸かし、コーヒーを入れた。
1ヶ月弱帰らなかっただけで…酷く懐かしく感じた。
雅紀と…1年間過ごした部屋。
俺はゆっくりと部屋を見渡した。
暫くすると玄関が開く音がする。
その方向を見つめると…雅紀が入って来た。
雅紀「ごめん。待たせたね」
「ううん。俺も今来たとこ。コーヒー入れてるよ」
雅紀「丁度良かった。サンドイッチ買って来たんだ。お昼まだでしょ?」
「うん。ありがとう」
沸かしたお湯でコーヒーを入れ、テーブルに向かい合って座った。
「うん。やっぱりあそこのパン屋はサンドイッチが美味しいね」
雅紀「間違いないね」
いつもと変わり無い会話をしながらサンドイッチを口に運ぶ。
半分程食べたところで…俺はサンドイッチをテーブルに置いた。
雅紀も手を止め俺を見つめる。
俺は…ゆっくり息を吐きながら話した。
「………雅紀が家出て…俺もここを出た」
雅紀「………」
「昌宏さんと…一緒に居た」
雅紀「そう、か…」
「彼と…寝た」
雅紀「………」
「昌宏さん…シカゴに行くんだ。それで…着いて来てくれって言われた。舞も一緒に」
雅紀「シカゴ…?」
「うん。近くに移植専門の大きい病院があるんだって。だから…」
雅紀「………行くの?」
「………まだ…返事はしてない。とりあえずパスポートは作った…」
雅紀「そうか…」
暫く続く沈黙。
これでもう…雅紀とは終わりだ。
そう思った。