第11章 別離
午前6時。
まだ隣で眠る昌宏さんを起こさない様に俺はベッドをすり抜け、裸のままバスルームへ向かった。
コックを捻り、温かいお湯を浴びる。
「はぁ…」
脳裏に浮かぶ、シカゴ行きのチケット。
そして昌宏さんとの情事。
ぐるぐると映像が頭の中で回る。
振り払う様に身体を洗い、風呂場を出た。
リビングに入ると同時に俺の携帯が音を立てた。
ディスプレイを見て一瞬固まる。
『雅紀』と表示されたディスプレイ。
「………」
タップして耳に当てる。
「もしもし」
雅紀『………もしもし。朝早くからごめん』
「ううん…」
雅紀『………話したい事があるんだ。とても大事な話』
「うん…俺も…話したい事があるんだ」
雅紀『………今日…逢える?仕事は?』
「休みだよ」
雅紀「良かった…家に居るの?」
「………ううん。人の家に泊まってる」
雅紀『………』
「………」
雅紀『お昼頃…戻れる?』
「………分かった。じゃあ丁度12時でいい?」
雅紀『分かった。じゃあ12時に』
「うん」
そしてそのまま電話は切れた。
きっと…雅紀の答えが出たんだ。
そして俺も…もうすぐ答えが出るかもしれない。
全てを…雅紀に話そう。
昌宏さんの事も。
俺はぎゅっと携帯を握り締めた。