第11章 別離
「ここ…解約してなかったんだね」
松岡「あぁ。仕事部屋という名の息抜き部屋だよ。それに家族と住んでた所はこの間引き払ったからここでまた住んでる」
「俺がこの間泊まった部屋?」
松岡「そうだ」
「そっか」
昌宏さんに連れられたのは…かつて俺達が暮らしていた愛の巣。
家具も…小物もその殆どが変わらずにそこにあった。
松岡「翔」
「ん?」
振り返ると…そのまま昌宏さんに抱き締められる。
松岡「………愛してる」
「………」
何も言わずに俺は…昌宏さんの背中に手を回した。
松岡「あいつとは…どうなった?」
俺を抱き締めたまま、昌宏さんが聞いてくる。
「………出て行った」
松岡「………」
「距離置こうって。そう言われた」
松岡「………そうか。すまん」
「………」
松岡「………それで俺の家に泊まるって事は…期待していいのか?」
「………」
松岡「翔。話あるんだろ」
「………うん」
松岡「………話さないのか?」
「………ここに…暫く居てもいいかな」
松岡「え…」
「………駄目?」
身体を離し、驚いた顔で昌宏さんは俺を見下ろしてる。
松岡「それって…どういう意味か分かってるのか?」
「………暫くの間だよ。また出て行くから」
松岡「それでも。お前がここに居る事が俺にとってどういう事か…」
「………」
松岡「………抱くぞ。それでもいいのか」
「………構わないよ」
松岡「………」
暫くの沈黙の後、昌宏さんの唇が降りてくる。
俺は目を閉じ…昌宏さんの首に手を回した。