第11章 別離
ーカズsideー
「ショウさん…落ち着いた?」
翔「………ん…」
布団の中で翔さんは俺を見つめながら頷いた。
「びっくりしたよ。家に急に来るから。しかも来てそうそうベッドに潜り込むなんてさ」
翔「………ごめん」
「別にいいですけど…。それで…別れたんですか?」
翔「………距離置こうって…言われた」
「そうですか…」
翔「………ぐすっ…」
翔さんの恋人が家を出て行った後、1人であの場所に居る事に耐えられなかった翔さんは連絡もせずに俺のマンションに押し掛けて一晩過ごした。
「はぁ…もう翔さん。泣かないで下さいよ」
グズグズと啼き続ける翔さんの頭を撫でた。
翔「だって…」
「翔さんはどうしたいんですか」
翔「どうって…雅紀と一緒に居たいよ」
「じゃあ何で松岡さんと寝たんですか」
翔「………分かんない…」
「分かんないって…」
翔「だって…昌宏さん目の前にしたら…何も考えられなくなって…」
「はぁ…」
本当に…この人小悪魔というか…。
ちょっとは厳しくしないといけないかな。
俺はベッドに腰掛け翔さんを見つめた。
「そんなんじゃ彼氏が出て行ったのも納得だな」
翔「にの…!」
「だってそうでしょ?昔の男と浮気なんて…遊びならまだしも…そんなにまだ気持ちのある人となんてさ。自分の存在は何だったんだって…俺ならそう思うな。一緒に居るのは辛いですよ」
翔「………」
涙を流しながら翔さんはうつむいた。
「だから…翔さんも自分の気持ちをはっきりさせるべきですよ」
翔「………」
「彼氏さんも…どうしたいか考えてると思うよ。だから…グズグズ泣いてる暇があるんなら…考えなさい。そして自分の答えを見つけるんですよ」
翔「………うん…」
「後悔しないようにね」
翔「………ん…」
涙を拭いながら、翔さんは力強く頷いた。
もう大丈夫かな…。
翔さんの肩を抱き寄せ、ポンと背中を叩いた。