第10章 対面
松岡「多分…妻でしょう。あいつは俺に恋人が居るの分かってて…付き合ってましたから。でも…俺が愛する事が出来なかったからそう思ったんでしょう。いいんです、憎んで俺を忘れてくれたら…悪いのは俺ですから」
「………松岡さん…」
松岡「すみません暗くなってしまって。飲みましょう」
「は、はい!」
俺達は話題を変え、また新たに飲み直した。
「やべ…飲み過ぎたな…」
松岡「もうこんな時間か…相葉さん…そろそろ帰りますか?帰れます?」
「んー…はぁい…」
テーブルに手を着いて立ち上がるが足元がふらついて松岡さんに支えられる。
松岡「大丈夫?」
「す、すみません…」
松岡「帰りましょう。俺家まで送りますから」
「え?」
松岡「足元ふらふらなのに…転んで怪我しますよ?」
「いや…ご迷惑ですし」
松岡「大丈夫だから。さ、行きましょう」
そのまま軽く肩を担がれ、俺達は店を後にした。
「あ、ここですうち」
松岡「………いいマンションだ」
「そんな事ないですよ。翔起きてるかな」
「………」
インターホンを鳴らすと向こうから声がする。
翔『雅紀?』
「ただいまー起きてたの?」
翔『起きてたよ。今開けるね』
暫くすると翔の足音が近付いて来る。
ふと、松岡さんを見上げると…険しい顔で扉を見つめていた。
「松岡さん?」
「………」
するとカチャリという音と共に入口が開かれた。
翔「雅紀おかえ…」
松岡「………」
「翔ただいま」
翔「………」
「翔?」
そのまま翔は…松岡さんを見つめて固まってしまった。
松岡さんは…翔を見つめている。
翔「………何で…」
「やっぱり…翔だったんだな…」
会話の意味が分からず、俺は独りでその場に取り残された気分でいた。