第10章 対面
「じゃあ…お疲れ様です」
松岡「お疲れ様です」
個室の居酒屋で俺達は乾杯を始めた。
約1ヶ月前に始まったプロジェクトが今日終わり、俺は松岡さんと2人で打ち上げと称してこの居酒屋にやって来た。
優秀な松岡さんのお陰で予定よりも早くこの仕事を終わる事が出来、俺も松岡さんも上機嫌だった。
今日はいいお酒が飲めそうだな。
松岡「すみませんね。工事現場の仕事せっかくお休みの日に」
「いえ。松岡さんと飲むの楽しみにしてたんで」
松岡「そう言って頂けると嬉しいな」
「松岡さん…噂には聞いてましたけど…本当凄いですね。一緒に仕事出来て良かった」
松岡「相葉さんこそ。偉そうですけど…言った事全部吸収してくれて。やりがいがありましたよ。また一緒に仕事しましょう」
「はい!」
最初から会話も盛り上がり、徐々にお酒も進んでいった。
松岡「相葉さんの人柄も…好きですよ。さぞかしモテるんでしょ?」
「いえいえ。松岡さんこそ…」
松岡「一応既婚者なんで。まぁ…もうすぐ独身に戻りますけどね」
「あー…はは…」
松岡「相葉さんは…恋人の事…ご両親は…」
「知ってますよ」
松岡「え?そうなんですか?」
「はい。隠し事はしたくなかったし…そんな事で反対するような家族はいらないですから」
松岡「………そうですか。どんな人ですか?」
「美人で…素直で…妹思いで…自分の幸せよりも妹の幸せを1番に考えてる人です。妹の為に…ずっと辛い思いして…それに耐えてる人です。だから…側にいて支えたいんです」
松岡「ご馳走様です」
楽しそうに松岡さんは俺の話を聞いていた。
「松岡さんは…どんな方でした?その…昔付き合ってた人…男性の…」
松岡「そうですね…。美人でしたよ。素直で純粋で…彼以上に愛した人はいないです」
「え、じゃあ何で…結婚したんですか?」
お酒の勢いで俺は彼のプライベートな事に首を突っ込んだ。
松岡「………その人を愛しすぎて…怖くなったのかな…今の妻に走って…最低なんですよ俺」
「………」
松岡「結局未だに忘れられなくて…妻も…自分を愛してくれない夫に愛想を尽かして…結果離婚調停ですよ」
「何か…噂と違いますね…俺…結婚してからもその人と続いてたって」
松岡さんは黙って微笑んだ。