第9章 tragic love②
ー1月25日ー
俺は公演の中央にある自動販売機の横で昌宏さんを待っていた。
初めて出会った公園。
初めて昌宏さんを見たこの自動販売機。
………イケメンだったよな。
「………昌宏さん…お願い来て…」
最後にもう一度だけ…昌宏さんと過ごしたい。
思い出が欲しい…。
俺は祈る気持ちで昌宏さんを待った。
時刻は…もうすぐ13時。
松岡「翔」
声を掛けられ振り返ると、愛しい人がそこに立っていた。
「………昌宏さん…」
松岡「ごめんな待たせて」
「ううん…」
………緊張する。
誘ったのは俺なのに…。
松岡「どうした。ほら行くぞ」
昌宏さんの手が伸び、俺の手を握る。
………恋人繋ぎ…。
松岡「翔」
「………うん」
俺はその手を握り返し、並んで歩いた。
俺と昌宏さんの最後の一日が始まった。
これまで過ごしていた時間と変わらない。
俺の誕生日にはちょっとお洒落なレストランで食事。
そして素敵なホテルに泊まる。
そんな日々を過ごしていた。
その中でいつか話していた。
松岡「ハタチの誕生日にはお前の誕生日の年のワイン買ってお祝いしような」
その言葉が嬉しくて。
事あるごとに俺は昌宏さんに「忘れないでね」と言っていた。
今日は俺の20回目の誕生日。
昌宏さん…覚えてる?
彼の背中に俺は何度も心の中で問い掛けた。