第9章 tragic love②
「………」
松岡「………元気にしてたか?」
「………お陰さまで」
松岡「そうか」
「………坂本店長なら店に居ますよ」
彼が目の前に居る事に耐えられなくなり、俺は中に戻ろうとした。
松岡「翔」
その腕を後ろから昌宏さんに掴まれた。
松岡「………坂本さんから聞いた。男娼やるって…」
「………」
松岡「………本気なのか」
「………もう関係ないだろ」
松岡「………俺の…せいか…」
「自惚れるなよ!」
俺は掴まれたその手を思いきり振り払った。
「あんたなんてもう関係ない。どうでもいい。舞の為だ!」
松岡「翔…」
「止めて…呼ばないで…」
松岡「………ごめん」
「………」
そのまま、昌宏さんは俺を抱き締めてきた。
俺も…抵抗出来ずに彼の背中に手を回した。
昌宏さんの…腕の中…昌宏さんの匂い…。
松岡「………最後にもう一度だけ…逢いたかったんだ…自分勝手だって分かってるけど…」
「………本当…勝手だよ」
松岡「………うん…」
「なら俺も…自分勝手な事言うよ…」
松岡「何…?」
「………25日…なんの日か分かる?」
松岡「………分からない訳ねぇだろ…」
「その日1日だけ…元に戻って…」
松岡「………」
「このまま終わるのは嫌だ…それでちゃんと終わりにしよ?」
松岡「………」
すると昌宏さんの身体が離れ、俺を真っ直ぐに見つめる。
「………11時にあの公園に来て。それまでに来なかったら…諦める」
松岡「………」
「………待ってるから」
俺は彼の腕を離れ、背中を向けた。
一度も振り返らずに俺は店の中に戻った。
きっと来てくれる。
だって…あの約束…昌宏さんが忘れる訳ない。
信じていいよね…昌宏さん…。