第8章 tragic love①
「君が櫻井くんか。店長任されてる坂本昌行です。よろしく」
「よろしくお願いします」
差し出された手を俺は握り返した。
あの日から数週間、身体の傷が癒えた俺は新しいお店に挨拶にやって来た。
店長の坂本さんは気さくな笑顔で俺を迎えてくれた。長瀬店長の時に感じた…嫌な感じは無く、爽やかな印象だった。
坂本「オーナーから色々話は聞いてる。大変だったね」
「………はい…」
坂本「大丈夫。うちの店はそういう事は無いから。俺がさせない。誓うよ」
「はい」
坂本「それに…松岡は知り合いなんだ。さっき電話掛かってきて言われた。『俺の恋人を宜しく。手出したら殺す』って」
「昌宏さんが…?」
坂本「ああ。あいつがそんな事言うなんてな」
そんな事言ったの…。恥ずかしい。
坂本「厳しい事もあるけど…皆でこの店盛り上げよう。宜しく」
「宜しくお願いします」
会ったばかりだけど…何となく感じた。
この人は…信用出来る人なんだって。
坂本「じゃあ仕事を教えよう。おいで」
「はい」
こうして俺は新たな店でスタートを切った。