第14章 重ならない想い/武田信玄
「んっ……あぁ……やめて……」
「ん? これくらいで根をあげるなら立派な忍びにはなれないぞ」
「っ……(でも……恥ずかしい)」
此処は忍びとなるための修行の場
信玄に想いを寄せる凛は、立派な忍びになるべく修行の真っ最中。
いつもであれば上忍であるくノ一が凛の指導を行ってくれるのであるが急な任務が入ってしまい、急遽の代役__
その相手が信玄である
「っ……ぁ……」
「声をだしてはいけない修行ではなかったのか?」
甘くも余裕のある声音
どれだけ凛の身体を淫らに触れようが息を乱さない信玄
「すみません……」
「もう修行はやめるか?」
「大丈夫です……続けて下さい」
小さく深呼吸をすると、唇を噛み締め信玄を見つめる凛
忍び__特に凛のような女の忍びは「くノ一」と呼ばれている。
くノ一の任務はさまざま
特に女の武器を使い敵将から情報を得たりする事もある。
そのためには男を自分の色香で虜にする手管も必要となるし、閨を共にした場合は乱れたふりをしても自身は決して乱れてはいけない。
敵に陥落してはいけないからだ。
信玄が相手でなければ凛は乱れることもなく、耐える事が出来るのであるが、好いた男に触れられて乱れない女はいない。
(っ……声が洩れそう)
耐えるのに必死で涙をこぼしていることさえ気付いてはいない。