第13章 しのぶ恋/顕如
急がないと……
周りを気にしながら薄暗い森の中を早足で抜けていく。
時々、後ろを振り返りながら
「後はつけられていないよね?」
うん、大丈夫みたい
はやる気持ちを抑えようと胸に手を当てながら、それでも足は前へと進んでいく。
目的の小屋が目に入ると嬉しさと少しの緊張で心臓が踊りだす。
やっと逢える
周りを確認する余裕もなく私は扉に手をかけて、勢いよく開け放つ。
すると目の前には逢いたくて、逢いたくて
夜も眠れないくらいに恋い焦がれていた愛しい人が腕を広げて待っていてくれていた。
「顕如さんっ」
迷う事なく私は彼の腕の中に飛び込むと力強く抱きしめられる。
「元気にしていたか?」
「はいっ……」
久しぶりに聴く顕如さんの声が私の耳を擽っていく。
それはとても甘く響いてきて頭が蕩けそう。
時間を惜しむように私と顕如さんはお互いを抱きしめ合い、布団になだれ込んだ。
見つめ合っていると顕如さんの顔が近づいてきて、もっと顔を見ていたいと思いながらも瞳を閉じてキスを受け止めていく。
戯れのようなキス
顕如さんの身体の重みを感じて、これが現実だと実感できる喜びに私は浸っていた。