第10章 桜の木の下には……/上杉謙信
「ねぇ……謙信……桜の木の下には何が埋まっていると思う?」
「桜の木の下?」
「そう……この下に……」
木の根元を愛おしそうに見つめ指を指す凛。
「何が埋まっているというのだ?」
「掘り起こした人の大切な物だよ」
「そうなのか?」
「そうなんだよ」
振り返り微笑むお前が愛おしい
今、俺の目の前に立っているのに
触れていないと消えてしまいそうなくらいに儚げに見えてしまう。
冷水を浴びたかのような寒気に耐えられなくて、凛の腕を引き寄せ抱きしめる
「では、凛が掘り起こしたら何が埋まっているのだ?」
「もちろん……謙信……あなたに決まっているじゃないの」
「なるほどな」
凛の答えが俺の心を掴み取っていく
まったくお前ときたらどれだけ俺の心を縛り付ければ気が済むのだ?
頬が自然と緩んで、しまりのない顔を見せてしまっている自分が多少情けなく思ってしまうが……仕方あるまい。
それだけお前に惚れているのだからな
腕の中に閉じ込めた凛の温もりを確かめるかのように背中や腰を撫であげていく
「んっ……くすぐったいよ」
「嫌か?」
「だって……笑っちゃうよ」
笑い声を噛み締めるように呟くと俺の胸に顔を押し付ける凛。
そんな凛が愛おしくて耳に唇を寄せ、俺は囁く
「では違う快楽を与えてやろう」