第5章 何度でも……/豊臣秀吉
「うっ……ふ……ひっく……」
「ほら……もういい加減、泣き止め……な?」
「っ……だ、だって……」
さっきから俺の腕の中で泣いているのは、俺がこの世で一番大切にしている女__凛。
国境でちょっとした諍いがあり、それを収めるために暫くの間、城を留守にしていたんだが今さっき戻ってきたところだ。
信長様への報告が終わったあとすぐに凛の部屋を訪ねたんだが、俺の顔を見るなり泣き出す始末。
凛が泣いている理由はわかっているつもりだ
「久しぶりにお前に逢えたんだ……笑顔を見せてくれ」
こぼれ落ちる涙を拭ってもすぐに溢れだす涙
「だって……ひでよしっ……け、怪我をっ……」
「凛は大袈裟だな、これくらいの傷は大した事ない」
確かに俺の左肩には矢傷がある。
ちょっとしたヘマをして受けてしまったものだ。
だが、戦場に行って無傷で還ってくるのは稀だ。命があるだけマシというものだろ。
(女の凛にはわからないかも知れないがな)
「でもっ……私、心配で……」
「悪かったな」
いつものように頭を撫でると、懸命に笑顔を作ろうとする凛が愛おしくて……
まだ昼間だっていうのにもっと触れてしまいたくなっちまう