第4章 物の怪/明智光秀
寝ていると誰かに見られているような気配に気付き、目が覚める。
もちろん、部屋には私1人しかいない。
気のせいかと思って、また目を閉じて眠りにつこうとすると
カタッ
と小さな物音がする。
音がした方に蝋燭の灯りを照らしてみると、飾ってあった人形が倒れている__
(これって怪奇現象?)
そんな日が何日も続いていて、夜は怖いし眠れない。
そうなると睡眠不足になってしまう。
特に日中やる事がない私は、お昼寝をしても構わないんだろうけど……
みんなが働いているのに寝ているわけにもいかず、かといって花札や貝合わせをしても睡魔はやってくる
生あくびを噛み殺し、くっついてしまいそうになる瞼に力を入れて襲ってくる睡魔と戦うけど
(でも勝てる気がしない……)
「……散歩に行こう」
怠い身体に鞭を打ちつつ廊下を歩いていると、前から光秀さんが歩いていきた。
いつものように薄笑いを浮かべている光秀さんが、少しだけ眉毛をあげて私の顔をのぞき込んでくる。
「ずいぶんと浮かない顔をしているが……どうかしたのか?」
「別に……何もないですよ」
「ほう……」
何もかも見透かすような瞳に身体が強ばってしまいそうになる。
「足りない頭でいくら悩んだところで問題は解決しないぞ」
蔑んだような言い方なんだけど、頭の上に置かれた手のひらは温かい
その温かさにつられて、つい喋ってしまいたくなるけど……言ったらバカにされそうで
なかなか言えない。