第24章 届かない声/明智光秀*光秀side*
あの日、偶然にも雨の中凛に出会った。
ぬかるみにでも足を取られたのか?
見事に地面と対面していたな。
このまま見て見ぬ振りをすれば俺とおまえは傷つくことはない。
わかっている。
だが、俺の意思に反して身体は凛の傍へと歩み寄り、声をかけてしまう。
「こんな所で寝ていると風邪をひくぞ」
「……光秀さん」
既に雨に濡れてずぶ濡れだが、それでも少しでも雨から凛を守ってやりたくて傘の中に入れる。
「寝ているわけじゃないですけど」
「そうだったのか」
こんな時、俺は気の利いた言葉をかけてやる事ができない。秀吉あたりなら気の利いた言葉をスラスラと言えるんだろうな。
手を差し出すと怪訝そうに俺の顔と手を見比べる凛。
それでも差しだした手をとってくれただけで、俺は嬉しくなってしまう。
この俺がだ……
「ありがとうございます」
「1人で城下にきたのか?」
「はい」
「御館様が寵愛する姫君とは思えん行動だな」
「そうですか?信長様の許可はもらいましたけど」
「出掛ける時は籠を使うようにしろ」
「どうしてです?」
「悪い男に拉致されるぞ」
そう、悪い男にな___