第1章 再会、そして
「ホント、昔っから何も変わんねえな」
言いながらグラスに口をつける黒尾は、心なしか寂しげだった。
喧々囂々と舌戦を繰りひろげる赤葦とかおりに、妙な郷愁を感じたのだ。この感じ、懐かしい。まるであの頃に戻ったようだと。
「黒尾くんってばノスタルジックゥ~」
茶化してみせる木葉もまた、心中では黒尾と同じことを考えている。
楽しいだけでは済まされない今。
ストレス社会。毎日必死な自分。
良くも悪くも大人になってしまった彼らにとって、学生時代を彷彿とさせる犬猿のふたりの存在は、最高の【酒の肴】なのだ。
「……歳とったねェ、俺たち」
「なんだかんだ言ってあの頃が一番楽しかったよな」
「ああ、わかる、超同感」
戻りてえな。
ガキの頃に。
すっかりオッサン同士の会話である。