第1章 再会、そして
「……未練たらたら葦京治」
ぼそりと溢したかおりに、赤葦が即座に噛みついた。
「あ」に濁点がついたような奇妙な音を発しながら、赤葦は宿敵ともいえるかおりを睨みつける。
木兎かおり。あの人の妹。
そして、もうすぐ嫁になる女。
赤葦からすれば、ある意味では【及川徹】よりも手強い敵である。
「お前に言われると三割増しで腹立つ」
「私はアンタの顔見るだけで二日目よ」
「その月経止めてやろうか、ここで、今すぐ」
まさにイヌとサル。
どちらかといえば猛禽類っぽい二人だが、彼らの関係を最もよく表すとしたら、やはり犬猿の仲と呼ぶのが相応しいだろう。
品行方正で物静かな赤葦も、ことかおりに限っては嫌悪感を隠そうともしないし、かおりもかおりで常に臨戦態勢だ。
「仲悪いねェ、相変わらず」
「一周回って実は仲良いんじゃねえの」
「お、巧いこと言うね黒尾くん」
火花を散らす後輩二人を見やって、木葉と黒尾が酒を酌み交わしていた。
かたや日本。
かたやNY。
住まう場所こそ離れてはいるが、学生時代はしょっちゅう兵刃を交えた仲である。顔を合わせれば昔話も弾むというものだ。