第1章 再会、そして
彼が怒るのも無理はない。
高校時代、懇切丁寧に面倒をみてきた──お守りともいうが──木兎光太郎が他のオトコに寝取られたのだから。
「なにが名コンビ誕生、だ……ックソ」
寝取られ。略奪。
横恋慕とでも言うべきか。
赤葦の怨念こもった視線の先で微笑むのは、木兎光太郎と時を同じくして日本代表入りした及川徹である。
才溢れる努力家、及川徹はプロの世界に飛びこむなり脚光を浴び、その甘いマスクのせいもあってかテレビへの露出も高い。もはや扱いはスーパースターだ。
同世代の豪腕スパイカー、木兎とはどういうワケか馬が合うらしく、その抜群のコンビネーションは試合でも遺憾なく発揮されている。
及川曰く「似てるんだよね、岩ちゃんに。コータローの馬鹿正直っぽいところがサ」なんだそうな。
異常ともいうべき師弟愛で木兎を慕っていた赤葦からすれば、これがどうにも気に食わない。
しかも、だ。
マスコミに【名コンビ】とまで謳われてしまったのだから、彼の怨みつらみは最高潮である。