第2章 01 へんなひと
いや例えが細かすぎて伝わんねぇ。
と、女子はちらりと何もついていない腕を見てこちらを向いた。
「あー、もうこんな時間だー」
いやいやクソ棒読みだから。腕時計ついてねぇから。どこ見て言ってんのこいつ。めんどくさいからって誤魔化し方下手すぎかよ。
「という事で、あでゅー」
何故か拙い口調で最後の台詞を言うと女子は他の部の勧誘と新入生が入り乱れる校庭を蝶のようにひらひらと舞いながら消えていった。
「……なんだ、あれ」
夜久が目を細めて人混みを見ながら溜息を吐く。俺はさぁなあと言いつつ手元のバレーボールを弄んだ。
今時の若いやつってあんな怖いもの知らずなのか。それともあいつだけなのか。
俺はよくわからない疑問を抱きつつぽつりと一言零した。
「へんなやつ」