第3章 おわりの、はじまり。
.....あの日は、雨が降ってた。
僕だけで行くはずだった出張なんだけど、先方の急な申し入れがあったからばたついて。
スケジュール的に先輩が付いてきてくれることになった。
僕としては嬉しかったよね。
最近一緒にいることが少なくなったから、仕事上でも一緒にいる機会ができて。
先輩は嫌だったかもしれないけど、それでも嬉しかった。
無事に出張先での仕事を終えてあとは帰るだけ、だったんだけど。
雨が降ってた。しかもすごい大雨。
帰りの新幹線が運休で、駅員さんに再開の目処は立ってませんって言われた。
どうしようか思案してて、僕一人なら最悪野宿でもよかったんだけど、先輩を見たら寒そうにしてて。
すごい雨だったから、傘差してても少しスーツとか足元が濡れてるみたいだった。夜になって気温も下がるし、余計寒いのかな。
一応先輩に確認したら、どこか泊まる所探したいって。
先輩と手分けして近くのホテルに電話するけど、この雨で新幹線も電車も運休になってたから全然空いてない。
とうとう先輩が、震えだした。寒すぎるのかな。
僕はスーツのジャケットを脱いで、先輩の肩に掛けた。
先輩は遠慮したけど、見てらんないって言って押しつけると可愛くありがとうって笑った。
またホテルを探し始めると、しばらくして先輩がホテルが見つかったという。よくこんな日に二部屋も空いてたな。よっぽど古いホテルなのかな、と思いながら先輩に連れられてホテルに着いた。
.....なんか結構高そうなんだけど。それだから逆に空いてたのかな?と思いつつフロントでチェックインの手続きをしていた僕に衝撃が走った。
「では、お部屋は6階のダブルルームになります。」
笑顔のホテルマンを二度見した後に、先輩の顔を見ると不思議そうな顔をした。
.....これ絶対分かってないやつだ。
とりあえずホテルマンから鍵を受け取り、先輩を端っこに連れていく。
「ねぇ、先輩。ホテルに電話したときなんて言われたか覚えてる?」
「え?ホテルに?あと1室ダブルルームが空いてますって言われたけど...。」
なんでそんなこと聞くのか分からないっていう困り顔の先輩に見上げられる。いやいや、だめでしょ。ダブルルームって。
「ダブルルームって、先輩分かる?2人で一緒の部屋に泊まるんだよ。ベッドも一つしかないの。」