第1章 かなわない
静かな部屋に響く水音と、やけに甘ったるい彼女の吐息。
あぁ、もう。全部壊したくなる。
一段と強く腰を押し付けて、わざと乱暴に抱く。
途端に嬌声をあげて、潤んだ瞳で僕を見つめる。
「...っあ!...ッい、一松、く.....!」
そう言いながら僕の首にすがりつこうとする手を阻むように、さらに激しく腰を動かす。
やめて。出来れば名前なんて呼ばないで欲しい。
出来ればキスもしたくないし、抱き合いたくもない。
顔を見なくて済むから、するならバックが一番いい。
「...やっ.....!あぁっ...あ、」
グチュグチュ、と卑猥な音と
パン、パン、と渇いた音の合間に
絶頂が近いであろう彼女の切ない声が聞こえる。
「...ねぇ、イキそう?イキそうなの?
勝手にイくなって、何回言ったら分かるの?」
そう言いながら、腰をグリグリと横に動かすとさらに息を荒らげながら彼女は僕を見た。...切なそうに、物欲しそうに。
「...っ!ご、めん...な...さ、.....あ、ぃイ、きそ...っ」
「あーあ、今日もイクんだね。
ほんと淫乱...」
「...ちが、.....うっ!あ、あ...!」
「何がっ、違う、...のっ?
...同じ、顔なら...っ
誰でも...っ、いいんで...っ、しょ...っ?!」
「...ち...がっ!あ、あ...!イク...っ!」
彼女が上り詰めると同時に、ナカの締め付けが強くなり、堪らず僕も果てた。
ゴムの中に、白くてドロドロした液体が溜まっていく。
僕の心の中みたいだ、と思った。酷く汚い、気持ち。