第8章 偶然(チョロ松)
チョロ松「○○ちゃん何食べたい?」
「う~んとね~」
○○ちゃんは顎をさすりながら考えてる。
「よし、クリームパスタにしよ!」
店員にさくさくと注文する。
料理が来るまでの時間が妙に長い気がして、気まずかった。
早く、来て。
いや、来て欲しいんじゃない。
○○ちゃんと話したいんだ。
○○ちゃんと話したい。
それだけなのに、すごく遠い場所にいる。
手を伸ばせば届く場所なのに、
手を動かすことすら出来ない。
見えない泪に胸を伝う。
聞こえないない潤に心が響いた。
***
料理がきた。
クリームパスタとハンバーグステーキ。
兄弟にバレたらきっと怒られるだけではすまないだろう。
そう知ってていただきますと、口にする。
○○ちゃんがフォークにパスタを絡ませて、口に運ぶ。
普通の人の食べ方なのにな。
何だが上品に見える。
回りから見たら普通の人の筈なのに、彼女は完璧に見える。
あぁだめ、もう普通に好き。
「美味しいね、ここ。また今度誘ってね?」
○○ちゃんが話しかけてくれた。
話題を振ってくれた。
いやそれより、『また来よう』と誘われた。
チョロ松「今度絶対連れていくからね。」
僕は目も合わせずに独り言のように呟いた。
「…………」
ほら、目すら合わせないから○○ちゃんが黙ったじゃないか。
せっかく○○ちゃんが話しかけてくれたのに。
せっかく○○ちゃんと楽しく話せるチャンスをくれたのに。
目を合わせて話す。それだけなのに。
僕は蔑ろにした。本当にバカだ。
《女の子絡むとホントポンコツになるよね―?》
確かに、トド松の言うとうり。
ポンコツでバカでどうしようもないな、僕は。
いつもは美味しい筈のハンバーグが滑稽で脂っぽくて、妙に不味かった。