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ある一週間のこと

第2章 二日目




 ▼◇▲


「お疲れー、フィルちゃーん」

「やっと終わりました~」


全てのお客が帰った後、僕は控室のソファーにぐったりと横たわった。
既に何人かの仕事仲間はそれぞれ食事に行ったり、帰宅したりといないが、新人の何人かが掃除と後片付けをしている状態だ。

顔を真っ青にして横たわる僕に、この店のオーナーであり人狼でもあるジェイさんがねぎらいの言葉をかける。
ジェイさんはいつも控室の方で、事務作業をしている。表に出ることはほとんどない。っていうか、僕が知っている限りでは全くない。

僕が入る前は、結構有名なホストだったらしいけど、ちょっとイメージがつかない。


「いつもよく頑張ってるわね。感心するわ。やっぱりうちの店のトップに入る男だけはあるわねぇ」

「褒めすぎですよ、店長」


あはは、と苦笑いをしたとき、控室のドアが勢いよく開いた。


「フィル! 大丈夫!?」

「えっ、ミリィちゃん……!」

「ミリィちゃんお疲れ様~」


深い青色の髪に、翡翠色の宝石のような瞳。肌はとても白いが、僕とは違って決して不健康そうなイメージは湧かない。ミリィちゃんは勢いよく僕に迫り寄ってくる。髪を結いあげていて、服も男性物を着ている。
人魚である彼女は、人間の姿に一日3時間だけしかなれない。でも、何故か僕のところにはよく来る。「放っておけない後輩みたいだから」って笑顔で言われたことがあるけど、ちょっと胸にぐさっと来る一言だった。


「今日のお客さんはびっくりしたわね、まさかあんなに迫ってくるなんて、思わなかったもの。でもフィルがちゃんと私が言った通りにしてくれて良かったわ。お客様を不快にするなんて、ホスト失格だからね」


ミリィちゃんから発せられるオーラに僕は目を白黒させながらも、手を横に振った。


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