• テキストサイズ

ある一週間のこと

第2章 二日目




「だって全然振り向いてくれないし……もう100年もずっと好きなのにー」

「え……ひゃ、ひゃく……」


一瞬だけ笑みを強張らせるが、すぐに元の笑顔に戻り、慌てたように相手をなだめる。流石メデューサ、生きている年数も恋の年数も違う。って、感心してる場合じゃないっ。


「そんな100年も好きだった人をあっさり諦めちゃダメだと思いますよ! 僕なんかよりも、その好きな方の方が素敵だと思いますし……!」

「フィル君も素敵だよー」

「うっ、え、えっと……諦めちゃだめですよ!」

「むー、フィル君は彼女とかいないんでしょ?」


絡みつくような甘い言葉に、僕は言葉を詰まらせる。
最近入った新人ホストの子に目線で助けを求めるが、彼もどうしたらいいかわからず固まっているだけだ。

思わずホストとしての心構えを忘れて、逃げ出したくなりそうだが、通りすがった男性がささやいてきた言葉に身を引き締めた。必死に心を落ち着かせて、笑顔で何事もないように接する。


「いませんけど……僕は全ての女性の王子様ですから、その誓いを破るわけにはいきません」

「やだー、フィル君ったらぁ」


爽やかな笑顔とともに告げた言葉に、アンジェラさんもかなり気を良くしたらしく、それ以上そのことについて何も言わなかった。
内心ほっとするが、接客が終わったわけではなく、僕はまたグラスを口に付けて、気を引き締めた。


/ 29ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp