第6章 六日目
そして、ぽかんとしている少女の前でその小鳥を両手ですっぽりと覆い隠す。本当はあまり使ってはいけないんだけど、今回だけは特別の特別。
優しく手に神経を集中させると、小鳥がほのかに温かな光を放ち始める。少女の目が丸くなると、僕の手にじっと視線が向けられた。体の中から力がゆっくりと小鳥へと流れていく。あまりにも強い力の流れに、一瞬酔いそうになるが、お得意の笑顔で何事もないかのように振る舞う。
時間としては30秒ほど。僕が手を小鳥の上からどかすと、血まみれだった小鳥には1滴の血もついていなかった。それだけではなく、空虚な目に生気が宿り、羽が動き始める。
そしてすぐに僕の手から飛び立ち、少女の頭の上をくるくると飛び回り始めた。
「ルー!」
少女が瞬く間に喜びの顔へと変わり、勢いよく立ち上がる。花が満開になり、一気に咲き誇ったかのように笑顔に僕の心も自然と明るくなった。
楽しげな笑い声で小鳥と一緒に飛び跳ねる少女は、僕の方を振り返り、これ以上ないってほどの笑顔で言った。
「ありがとうっ、綺麗なおじさん!」
町へと走りながら帰っていく少女の後ろ姿を僕は唖然と見つめる。
「おじ……さん……」
まさか“おじさん”と呼ばれるとは思ってなかった。僕そんなに老けてるかな!? いやいや、あれぐらいの歳の子だったら僕ぐらいの年齢でも“おじさん”になるのかな……一応“綺麗なおじさん”って言ってたけど……うぅ、嬉しいのに凄くショック。
がくりと膝をついて激しく落ち込む僕に、後ろにいたミリィちゃんが「あははっ」と面白おかしそうに笑った。僕が驚いて振り返ると、ミリィちゃんが本当におかしそうに笑っていた。
「あはははっ、おじさんって……フィル、そんなに歳とってたかしらー?」
「うぅ……そ、そこまで笑わなくても~」
しばらく笑っていたミリィちゃんだが、しばらくしたら落ち着いたのか僕の隣に座った。
「あー、面白かったわ」
「うー……ミリィちゃんまで……」
膝を抱えて落ち込む僕に、ミリィちゃんが「冗談よ」とくすっと微笑んで言った。