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ある一週間のこと

第6章 六日目




 ▼◇▲


「…………」

「…………」


いつものワンピースに着替えたミリィちゃんと海辺を歩く。いつもなら、仕事の話をしたり最近あった他愛のない話をするところだが、今の雰囲気はそんなことできるようなもんじゃない。

凄く気まずいというか……い、いや、驚かせた僕も悪いけどまさかああいうハプニングになるだなんて思ってもみなくて。
落ち込んでうなだれながら、とぼとぼ歩く僕だがミリィちゃんはこちらに一切目を向けようとしない。あ、これは嫌われたパターンかな。

ますます落ち込んでいると、ふと波の音に混じってすすり泣く声がした。顔をあげると、波打ち際に10歳頃の黒髪の少女がしゃがみこんで肩を震わせていた。

少し気になって近づくと、少女はハッとこちらを警戒したように見上げた。目がうっすらと腫れており、その頬に涙のあとがついている。


「どうかしたの?」

「……ルーが、動かないの」


少女は胸に抱えていたものをそっと僕に見せる。お腹の部分が綺麗な桃色の小さな鳥だった。
あいにく鳥には詳しくないので、なんの種類かわからなかったが、羽の部分が真っ赤に染まってぐったりとしており、既に死んでいる事がわかった。閉じていない空虚な目が僕を感情もなく見上げてくる。


「さっき、お隣の家の犬に噛まれて……でも、でも、さっきまで動いてたんだよ。なのに、もう動かないの。おかしいよね、こんなの……」


歪んだ笑顔で涙を流しながら、かすれた声で少女は呟く。その瞳が、後ろで僕らを見つめているミリィちゃんの翡翠色の目とよく似ている事に気付いた。

僕の心に荒れ狂うかのような悲しみが溢れてきて、この少女と一緒に泣いてしまいそうになる。まったく、僕は本当に涙腺緩すぎるって。

僕は目じりを下げて、「そっか」と小さく呟いた。しばらく少女はすすり泣いていた。
僕は暫く黙って考えていたが、彼女からその小鳥をそっと取る。ハッと警戒して僕をじっと睨むように見詰めてくる少女だが、僕は小さく微笑んで「大丈夫、怪我が治るおまじないだよ」と言った。



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