第11章 シンデレラエクスプレス
がちゃりと外から鍵の開く音がして…
そこにいたのは愛しい人。
「智くん?どうしたの?」
おとといの夜に翔くんから聞いたよ?
それ。
「これ…現実?」
そういう僕に近づいてきた彼は
僕のほっぺを引っぱるという
古典的な方法でリアルを教えてくれた。
「現実だってわかった?
ごめんね、朝ご飯買いにいってたの」
そう言ってビニール袋を見せる翔くん。
「智くんもちゃんと食べてね?」
「いや…いいよ」
「ダメ、ひとつでいいから食べて」
「う…一つでいい?」
上目遣いで確認するとやさしく
微笑みながら頭をポンポンって
してくれた。
「翔くん、仕事は?今日、ないの?」
「あるよ?
智くんが食べるの見届けたら
出るから」
「翔くん…この時間のためだけに
来てくれたの?」
「だって俺が会いたかったから…
待てなかったの」
そういって笑う。
「翔くん…ありがとう。大好きだよ」
それしか言えない僕。
「ほら、食べて」
翔くんもそう言いながら
買ってきたおにぎりを頬張る。
翔くんの食べてるところ、
見るの好きだなぁ。
リスみたいだね。
食べ終わって支度を始める僕を見て、翔くんも支度を始める。
来たときみたいに帽子を被り
メガネをかけた翔くん。
後ろからがばっと抱きついて
耳に一つキスを落とす。
「東京で待ってるね」
そう一言囁いて…颯爽と出て行った。
僕がその後のロケをものすごい勢いで
こなして予定よりも早く
東京に戻ったのは言うまでもない。