第46章 バイカラーサファイアの夜 ーリクエストシリーズー
「…さみしい
ねぇ…僕とラグビー…どっちが大事?」
思ってもいない言葉が聞こえた。
俺に背中を向けたままの智くんの口からこぼれた言葉。
何も答えられない俺に智くんが更につぶやく。
「…こんなこと…、こんなこと言いたくなかった。
馬鹿な女みたいな…重い女みたいなこと言いたくなかった。
でもっ…でも!
最近の翔くんはラグビーばっかりで…。
僕だってわかってるよ、どれだけ翔くんにとってラグビーが大事かって!
でも…いままでそんなこと言ってなかったじゃん!
わかんないよ!翔くんが何を考えてるかわかんない!」
いつの間にか身を起こし枕を抱きしめたまま珍しく感情的になった智くん。
小さく震える肩が智くんの気持ちを伝えてくる。
向けられた背中をギュッと抱きしめる。
「ごめん。
智くんのことが好きだ。
愛してる…だからお願いだから俺から離れないでよ。
智くんに甘えてるのはわかってる。
でも智くんがいないとダメなんだ!
だから…お願いだから挽回のチャンスを俺にください」
腕の中の智くんが身じろぎする。
少し緩めた腕に合わせるように智くんがゆっくりと振り向き、その瞳に俺を捉えた。
うっすら張った水の膜に俺の情けない顔が映った。