第36章 とりっくおあ…
「翔ちゃん……ぉはよぅ…」
眠そうな声で呟く和。
「おはよう、和。
花火とショー、はじまるよ」
「うん…見る…」
そう言うとベッドを降りて窓際に歩み寄る。
「ここ、眺めは良いけど…
窓、ほぼ開かないのな。
智くんも俺も知らなくて…」
「なんでそんな顔するの?
窓、小さくしか開かなくても
十分に見えるじゃん!
動画、撮影してあとで
見せてあげようかな?」
「いいよ、そんなことしなくて…。
それより…飲まない?」
ワインとかシャンパンとかおしゃれなものにすればよかったかなって思いつつ、ビールを頼んだ俺。
缶のプルタブを起こすといい音がする。
「うん、飲む!
飲みながら見るなんてマジ最高!」
俺の手から缶を取り、そのまま口をつける。
グラスもあったけど…こっちのほうが俺たちらしい。
ツマミを食べつつふたりで秋の花火と夜のショーを楽しんだ。
「ふふふ、綺麗だったね」
和が少しふわふわきた口調で言う。
「お前のほうが綺麗だけどね?」
「……なにそれ?
翔ちゃん…キザ…だよ?」
ビールのせいだけじゃないと思う。
少し赤らんだ顔の和。
「おいで?」
和の腕を引っ張り自分のところに引き寄せる。
顎に手をかけて和の唇を塞いだ。
ビールの味のする口腔を舌で舐る。
和の舌が絡まってきて、淫靡な音をたてる。