第30章 世界一難しい恋?
楽屋に入った途端に翔ちゃんが僕の唇を塞いだ。
「んっ、んんっ、しょ…ちゃ、だめっ」
なんとか離れた唇を銀の糸が繋ぐ。
「ようやく会えたんだもん、
大人しくしてくださいよ?鮫島社長…」
翔ちゃんの手が素早く動いてネクタイを剥ぎ取り、シャツのボタンをどんどんはずしていく。
「翔ちゃん、だめっ、ここ楽屋…
おねがい…やめっ…て…」
楽屋で突然、人が変わったみたいな態度を見せるから怖くて思わず涙が出た。
溢れる涙を翔ちゃんの指が優しく拭う。
「ごめん…。
ドラマ見てて…
智くんの表情がほんとに
彼女に恋してるように見えて不安だった。
やっぱり女の方がいいって
思ってるんじゃないかって…。
だから目の前の社長に…」
「翔ちゃん、よく見て?
ここにいるのは誰?」
翔ちゃんの両頬を手で包んでこちらを向かせる。
「智くん」
「でしょ?
零治はみささんが好きだけど…
僕は翔ちゃんが好きだよ?
それじゃだめ?」
「ダメじゃ…ない…」
「でしょ?じゃ、帰ろう?
……家で続き…しよ?」
「どっちと?」
「今日は僕を…抱いて?
でも……オールアップしたら…
零治を…壊してほしい…」
「わかった。
じゃ、帰ろう?」
荷物を纏めて一気に僕を着替えさせる翔ちゃん。
エスコートするように僕の手を取って耳元で囁いたんだ。
「うんと優しくしてあげる」
その晩、僕は翔ちゃんの腕の中で甘い甘い夢を見た。
これできっと…最後まで頑張れる。
零治の世界一難しい恋は終わるけど…僕のはこれからもずっと続いていくんだ…。
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