第7章 ひみつの暗号 Part.2
いつもの時間に始まる番組。
始まる前、楽屋で用意された衣装から
今日着るものを選ぶ。
ネクタイはいつも何本か
用意してもらっている。
色味とか柄とか…
ある程度のリクエストをして…。
スタイリストさんはきっと
俺のこだわりだと思ってるだろうけど…。
こだわりではない。
これは二人だけの秘密の暗号。
憧れだったキャスターの仕事。
でもはじめは緊張でおかしくなりそうだった。
周りの目や評価が怖くて…。
せっかく得たキャスターの仕事なのに…
逃げたいと思ってしまった。
そんな俺を一番近くで見ていて
いつもいつも守ってくれる彼。
その彼が提案してくれたこの暗号。
少しでも俺が緊張せずキャスターの仕事が
できるようにと笑顔を出せない番組に
小さな楽しみをくれた。
ネクタイに、自分の小さな仕草に、
メッセージを込めて…
キャスターの仕事をする。
だれも知らない二人だけの秘密。
あの人が見ててくれると思ったら…
なぜか緊張がほぐれる。
ダメだ思う瞬間、
あのふにゃっとした笑顔が浮かぶ。
放送後…携帯に届いている彼からのメールが
俺のご褒美。
うまくいっても、ダメな時でも
彼は全てを受け止めてくれる。
だから…今日も緊張はするけど頑張れる。