第3章 出会い
塔和シティに聳え立つ塔和タワー近くの路地裏で、ある男が歩いていた。
男は見た目20代前後、黒い髪は地につく程長く、その長い髪の間から覗く双眸は異様に赤く染まっている。
着ている黒いスーツは前を開き、シャツも開襟され、スーツと同じ色のネクタイも弛められていた。
男の名は「カムクライズル」。
元希望ヶ峰学園の超高校級の希望であり、江ノ島盾子によって絶望させられたとされる絶望の残党。
カムクラは待っていた。
今、この塔和シティに蔓延るモノクマのうち2体に植え付けたAIの実用性を見る為にだ。
江ノ島盾子のアルターエゴがどれ程の性能なのか、ちゃんと使い物になるのかどうかを判断するため。
その結果が出るまでの時間を、カムクラは適当に時間を潰し歩いていた。
ふと、カムクラが足を止めてしゃがみこむ。
そして自身の足元に落ちている紙を拾うと、すぐに立ち上がり再び歩き出した。
歩を進めながらカムクラは拾った紙に目を通す。
その紙は手配書だった。
人物の顔写真の横に名前が2つと、その下に人物についての説明が載せられている。
拙く赤い字で「殺すリスト」と一番上に書かれていた。
人物の名前は「暁 従者」とあり、すぐ上には「ヨリヒサザウルス」と印字されている。
顔写真の人物は少し赤みを帯びた茶髪を短く伸ばし、キリリと引き締まった目元と固く引き結んだ口は凛々しく、壮年の男性にある威厳を強く放っていた。
殺すリストを見つめながらカムクラは何処へともなく歩く。