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絶対絶望壮年 ーカムクラといっしょー

第5章 地下鉄にて


暁は自分の考えが何となく近かったこととカムクラが殺人を止めたからといって怒るような人物ではないということが分かって少し安心した。
「その人はどんな人だったんだ?」
「さっきあなたに向けて言った通り、甘い性格な奴でした。部屋の中に虫が入ってきて飛び回っているのが目障りだったので殺そうとしたら、潰さずに外に逃がしてやろうと言ってきたんですよ。蚊でもトンボでも。あなたのように殺人を止めるのならまだ分かりますが、死んでもどうでもいいような虫ケラにまで情をかける奴なんです」
どこか遠くを眺めるような目をしながらカムクラはまた溜め息を吐く。
「その時も同じように腕を掴まれて止められたので、つい言ってしまいました」
「そうだったのか」
暁がうんうんと頷きを返す。
カムクラはちらりと暁を見て、小さく呟いた。
「血が近いだけのことはありますね……」
暁には聞こえなかったようで、「害虫じゃないなら殺さない方がいいかもな」と言っている。
カムクラは会話に出てきた人物の面影を暁に重ねながら、また前に向き直って歩を進めた。








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