第1章 Trauma
翔side
「しょ…しょ…くん…」
掠れた声が俺の名前を呼んでいる。
その声の持ち主が、隣で寝ている筈の智くんの物だと気づくまでに、そう大して時間はかからなかった。
霞みのかかった視線の先にいたのは、苦し気に胸を掻き毟り、涙を流す智くんの姿だった。
一瞬にして覚醒した俺の思考と身体は、直ぐ様ガタガタ震える智くんの身体を両手で抱き締めた。
背中を擦りながら、「大丈夫だ」と、何度も囁きかける。
智くんのこんな症状は何度か見ているから、こうしてやることで落ち着きを取り戻すこともわかっていた。