第1章 Trauma
「もう大丈夫そうだね」
呼吸が落ち着いてきたのを確認して、智くんの顔を上向かせる。
余程苦しかったのか、額には汗で髪が張り付いていた。
そこに一つキスを落とす。
「ごめんね…起こしちゃった…」
申し訳なさそうにボソッと言う智くん。
こんな時でさえ、あなたは人の心配ばかり。
「濡らしちゃったし…」
って、俺のスウェットの心配まで
智くんが精一杯冷静を装ってるんだろう…
だって、俺の胸に触れたあなたの指先が、まだ微かに震えてるから…
まだ乾ききってない涙の痕跡を指で拭ってやると、そっと瞳を伏せて、
「ごめんね…、翔くん」
繰り返される謝罪の言葉。
謝る必要なんてないのに…
「やっぱりこの時期駄目みたいだ、俺…」
自虐的に呟く。
俺はずっと気になっていた。
普段は高層ビルに囲まれた街も、イルミネーションに彩られ、誰もが浮かれ気分になるこの季節。
家族や恋人と、一年に一度の最高に幸せな時間…
それなのにあなたはどうして…?